2017年4月10日月曜日

10年という重み


「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」:東山魁夷氏を読んでいる。美しい日本画の大御所とだけでしか、氏を評価していなかったが、氏62歳で打診され、73歳で無事奉納に至った、唐招提寺御影堂障壁画は氏の総決算でもあっただろうし、鑑真という名僧との時空を超えた対峙でもあっただろうし、中国と日本、特に裏日本を中心とした、海を隔てた文化の違いをも超える偉業でもあったかと思う。言わば、絵画という平面的な、且つ、なお更に平面的な技法をベースとした題材を、逆に障壁画という空間を得ることで、自由かつ壮大に展開できる喜びに、東山氏がチャレンジしたのは、これが初めてではない(フィラデルフィア公園での松風荘)ものの、7世紀来の仏教との対話も必要であった事から、日本及び中国各地の何十か所という取材旅行を行ったのも、その意気込みが感じられるというものだろう。又、いきなり壁画にするのではなく、綿密な下絵から、縮小された構想絵等、11年間掛けて創り上げた熱意と努力と執念は氏ならではの偉業でもあったかと思う。もちろん、氏は唯我独尊で作品を手掛けたのではなく、鑑真像を中心にして、やはり足掛け10年という遍歴を受けての来日された、日本への憧れと残してきた中国への想いを、青を中心とした明るい日本画で日本を描き、水墨画で中国を描くというコントラクトも採り入れ、色彩を使った時空の深みを表現したのも、秀逸な作品でもあったのだろう。本には細部に渡る氏の作品が掲載され、海原や森林の自然の営みを克明に記す氏の素晴らしい技量も伺え、絵画のやはりベースは自然に存在し、それをどう自分の目で見切るかだろうなんて、少しイラストレーターの立場から考えたりした。この僻地から奈良は聊か遠方であるが、こうして学んだ視点で是非訪れてみたい壁画である。



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